経理部門は「承認のスピードを早くしたい」「手作業によるデータの確認をなくしたい」という現場の実務を重視します。一方で情シスは、セキュリティの確保、すでにある基幹システムとの相性、導入したあとの管理やメンテナンスの手間、というシステム全体のルールや安全性を重視します。この視点の違いが、すれ違いを生む典型的なパターンです。
よくある失敗は、稟議電子化をワークフロー製品の導入だけで解決しようとすることです。経理部門が実務の要望をあいまいにしたまま情シスに丸投げしてしまい、プロジェクトが途中で止まるケースがあります。
反対に、情シス主導で標準化を優先しすぎた結果、現場の複雑な承認ルートや実際の仕事の流れを無視した設計になり、社内で使われなくなってしまうケースも多くみられます。
部門をまたぐ承認が絡む場合は、承認ルートを柔軟に設計・変更する考え方を押さえておくと、経理要件と情シス制約のすり合わせがしやすくなります。
社内の稟議や承認手続きは会社の規程を変えることで完全にデジタル化ができる一方、取引先との契約書の一部や役所に提出する書類など、未だに紙での保存や提出を求められる例外が残る点には注意が必要です。ツールの機能だけを比べるのではなく、部門同士の連携の問題として捉え直す必要があります。
経理が担うべき論点
経理部門が中心となって決めるべき実務のルールとして、例えば以下が考えられます。
- 承認ルートの設計(いくら以上の金額なら誰が承認するか、部門ごとの承認者の設定)
- 内容に不備があって差し戻す際の運用ルール
- 支払前の最終確認でチェックする項目の明確化
- 承認が遅れた場合に発生する支払遅延リスクの洗い出し
- 毎月の決算を早く終わらせるためのスケジュールへの影響確認
これらの実務ルールが明確になって初めて、システムへの落とし込みが可能になります。
情シスが担うべき論点
情シスが技術的な視点から設計・管理すべきルールは、以下の通りです。
- すでにある会計システムやワークフローシステムと、請求書クラウド(ClimberCloudなど)を自動でつなぐ連携方針の策定
- システムを使う人のアクセス権限の設定、操作ログの保存、データのバックアップ体制の構築
- 段階的にシステムを取り入れていく時期の監視体制の準備
- 各部門が会社に内緒で勝手にツールを導入し、セキュリティの管理ができなくなること(シャドーIT)を防ぐためのルール作り
両部門がそれぞれの役割を持ち寄り、共通のゴールへ向かう必要があります。
ハンコ依存の承認から内部統制を保った電子承認へ移す観点は、脱ハンコと承認プロセスDXの実践ガイドも参考になります。