DXは、3つのステップを経て実現されます。各ステップで達成される内容を確認していきましょう。
ステップ1:「デジタイゼーション(Digitization)」~アナログをデジタルに~
「デジタイゼーション」は、DXに至る最初のステップです。情報の記録を紙などで物理的に保存する方法から、デジタルデータによる記録に置き換えるなどの方法です。実際に経済産業省が2020年12月28日に公表した「DXレポート2(中間取りまとめ)」では、「アナログ・物理的データのデジタルデータ化」と記されています。一例を以下に示します。
・紙の契約書をPDFに変更する
・FAXでの送信を、電子メールやビジネスチャットに変更する
・対面で行っていた商談を、オンライン会議システムの活用に切り替える
この段階での主な目的は、業務効率化やコストの削減、ペーパーレスによる紙の節約です。業務プロセスの変更は、行われないケースが多いでしょう。
現行の業務プロセスを踏襲しながら、デジタル技術を導入するといったケースが一般的です。
ステップ2:「デジタライゼーション(Digitalization)」~デジタルで業務を効率化~
デジタライゼーションは、特定の業務について、デジタル技術やデジタルデータを用いて効率化・自動化する手法です。業務のプロセスにメスを入れる点が、ステップ1のデジタイゼーションとは異なります。「DXレポート2(中間取りまとめ)」では、「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と記されています。以下の取り組みはその一例です。
・ワークフローシステムの導入による、申請承認プロセスの自動化
・RPAの活用による、データ入力や操作の自動化
・SFA/CRM導入による、営業プロセスや顧客対応の管理
・IoTの導入による、工場のモニタリング
デジタライゼーションの主な目的は、業務の生産性向上や省力化・省人化、リードタイムの短縮です。
一方で、取り組み自体は単一の組織や業務だけでもよく、社内全体を巻き込むことまでは求められません。
ステップ3(ゴール):「DX」~ビジネスを変革し、価値を創る~
DXは、全社規模で取り組む業務改革です。製品・サービスの導入や業務プロセスの改善だけでなく、ビジネスモデル、さらには、組織や企業文化、企業風土も変革します。「DXレポート2(中間取りまとめ)」では、「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革」と記されています。DXの実現につながった取り組みの例を、以下に示します。
・金型加工装置の異常を音で気づく人的スキルを、音センサーを用いたIoTツールで実現。顧客にサブスクリプションサービスとして提供
・注文を紙の伝票からタブレットに変更し、店頭の無人化を実現。業務プロセスも大幅に変革し、人件費と残業時間の削減を実現
・食事補助制度の申請を簡略化。システムは生成AIを用いて自社開発。完成したシステムは、ビジネス用のWebアプリとして外販を開始
DXの主な目的は、新たな価値の創造と持続的な成長です。事業環境が大きく変化する時代への対応や、社会のニーズに対応するビジネスづくりに適しています。