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経理部門の残業削減は「ピーク業務の可視化」から|管理職が最初にやるべき3ステップ

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本記事は2026/07/29に更新しております。
経理部門の残業削減は「ピーク業務の可視化」から|管理職が最初にやるべき3ステップ

「経理はいつも忙しい」「月末の残業は仕方ない」——管理職の会議でもそう語られる一方、何がどれだけ時間を奪っているかは曖昧なまま、ツール導入だけが先行してしまい、使用が定着しないケースは少なくありません。

 

近年、請求書の電子化を進める企業は増えていますが、稟議や支払承認、経費精算の差し戻しが月末に集中し、経理の残業が減らないという現場の声は依然として多く聞かれます。これは、電子化が部分的にとどまり、承認フローという前工程のボトルネックが手つかずのまま残っているためです。

 

本記事では、経理の残業の構造的な原因を整理したうえで、ピーク業務の可視化から改善優先度を決める考え方と、管理職が最初に取り組むべき3つのステップ、そして稟議電子化が残業削減に効果を発揮する理由を解説します。

01

まずは結論!残業削減はツール導入より先に「ピーク業務の可視化」

経理部門の残業削減において、管理職がまず認識すべきは、新しいシステムの導入より先に、ピーク業務の可視化から始めることが重要だということです。

 

その理由は3点あります。

 

  1. 経理の残業は月末締めや支払承認、稟議回覧など、特定の業務に集中して発生している
  2. 業務量だけでなく、実作業時間と承認待ち・差し戻し待ちの時間を分けて把握しなければ、真のボトルネックは見えない
  3. 可視化によって改善の優先順位が明確になり、稟議・支払承認の電子化が最も効果の大きい領域として浮かび上がることが多い

 

実際の現場では、担当者が手を動かしている時間よりも、承認待ちや差し戻し対応による停滞時間のほうが長いケースも珍しくありません。根本原因を把握しないままツールを導入しても、現場の混乱を招くだけで期待した効果は得られない、というのが導入失敗に共通するパターンです。

 

本記事では、業務の棚卸しと可視化、改善優先度の決定、稟議・承認の電子化への着手という3つのステップを順に解説します。

02

経理部門の残業はなぜ月末に集中するのか

経理部門の業務は、月間を通じて均等に発生するわけではありません。月末締めや支払日、決算準備といった特定のタイミングに処理が集中する構造を抱えており、それ自体が残業の要因になっています。

 

さらに問題を深刻にするのが、前工程の遅れです。各部署からの経費申請や支払依頼、証憑の提出が期限ギリギリになると、そのしわ寄せはすべて経理部門へ積み上がります。厚生労働省の働き方改革関連の時間外労働の上限規制では、時間外労働の上限を原則として月45時間・年360時間と定めていますが、経理部門は閑散期と繁忙期の落差が大きく、月次平均では基準内に見えても月末に著しい長時間労働が発生しやすい実態があります(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制|働き方改革特設サイト」)。

 

加えて、稟議や支払承認が紙やメールのままである場合、承認がどこで止まっているかが把握できません。経理担当者が一件ずつ電話やメールで承認者を督促する、という光景は今も多くの企業で繰り返されています。

 

近年は請求書の受領をクラウドで電子化する企業が増えましたが、それに紐づく支払承認や稟議フローが紙のまま残っているケースは少なくありません。請求データは電子化されていても承認が滞れば処理全体は止まってしまいます。紙と電子が混在することで経理の確認作業がむしろ複雑になる、という状況も生まれています。

 

このように部分的な電子化にとどまっている企業では、請求書処理の効率化を進めた結果、次のボトルネックとして浮かび上がるのが、支払承認と稟議のフローなのです。

 

待ち・漏れ・手戻りの構造を整理したい場合は、社内申請で承認待ちが起きる原因と解消手順をまとめた解説もあわせてご覧いただくと、前後工程の設計イメージが掴みやすくなります。

03

ピーク業務を可視化する3つの切り口

経理部門の残業削減に向けた第一歩は、感覚ではなくデータで業務のピークを捉えることです。現場の声を客観的な数値とプロセスに落とし込むための3つの切り口を解説します。

 

業務フロー全体を見える化し、コスト削減につなげる視点は、バックオフィス管理職向けの業務フロー可視化の進め方でも整理されています。

 

業務量のピークを捉える

まずは月次・週次で処理件数が跳ね上がる業務を洗い出します。支払依頼、経費精算、稟議の回覧、入金消込、仕訳確認などをリストアップし、月のどのタイミングに集中しているかをカレンダー上にマッピングします。担当者別・業務別に件数を集計することで、月末に支払依頼が通常の数倍に膨れ上がっている、特定の担当者にのみ消込作業が集中しているといった事実がデータとして見えてきます。こうして可視化した集中日の根拠は、他部署へ期日厳守の協力を求める際のエビデンスとしても機能します。

 

【業務集中ヒートマップ(例)】

ヒートマップ例

処理時間と待ち時間を分けて見る

業務量を把握したら、次は対応時間の内訳を分析します。ここでは、実作業時間と待ち時間を分けて記録することが重要です。製造業の改善手法として知られるバリューストリームマッピングの考え方を応用すると、どこに滞留が発生しているかが明確になります。

 

例えば、1件の支払稟議の処理に3日かかっていたとしても、担当者が実際に手を動かしているのは15分程度で、残りのほとんどが承認待ちや差し戻し対応の待機時間というケースは珍しくありません。待ち時間が長い工程ほど改善余地が大きく、そこを優先的に手当てすることが残業削減の近道です。

 

ボトルネック工程を特定する

業務量と時間の分析結果から、繰り返し発生している停滞ポイントを特定します。代表的なものとして、証憑不備による差し戻し、承認者不在による滞留、Excelとシステムの間で生じる二重入力、紙の回覧に伴うタイムロスなどが挙げられます。

 

特定したボトルネックは一覧化し、発生頻度と改善難易度を整理したうえで管理職と現場が共有できる状態にしておくことが重要です。請求書クラウドの一覧・検索機能を使えば、受領済み請求データの所在や検索項目での絞り込みがしやすくなり、どの工程で照合・承認が詰まっているかの判断材料にもなります。

 

【ボトルネック工程一覧(例)】

ボトルネック工程 発生頻度 改善難易度 優先度
稟議・支払承認の滞留(紙・メール) 最優先
証憑不備による差し戻し 最優先
承認者不在による処理ストップ 優先
システムとファイルの二重入力 優先
紙の回覧書類の所在不明・タイムロス 検討
メール承認の見落とし・確認もれ 優先

04

管理職が最初にやるべき3ステップ

ピーク業務の可視化で現状を把握したら、次は管理職が主導して改善を進める段階です。現場との合意形成を図りながら、以下の3つのステップで取り組みます。

 

ステップ1:経理業務の棚卸しと可視化

月末月初を含む2~4週間の期間を設け、主要業務の処理件数、所要時間、待ち時間を記録します。ツールはExcelでも構いませんが、属人化や記録漏れを防ぐために入力フォーマットは部門内で統一してください。

 

数字の集計と並行して、現場担当者へのヒアリングも欠かせません。入力作業そのものが重いのか、それとも承認者からの返答が来ない待ち時間が問題なのかを切り分けることで、数字だけでは見えにくい隠れた負荷を把握できます。現場の声を拾いながら進めることが、その後の改善施策への納得感につながります。

 

ステップ2:改善優先度の決定

可視化データが揃ったら、改善施策の優先順位を決めます。削減できる時間などの効果と、コストや他部署の巻き込みを含む実現難易度の2軸でマトリクスを作成し、着手すべき領域を絞り込みます。

 

前工程の遅れが経理残業の主因である場合、稟議や支払承認、経費精算といった領域は効果が大きく、適切なシステムを選べば比較的取り組みやすい優先候補として挙げられます。この段階で増員・BPO・ツール導入のいずれが適切かという判断軸も整理しておくと、経営層への提案をデータに基づいて行えるようになります。

 

【改善優先度マトリクス(例)】

改善優先度マトリクス(例)

 

経理領域で使えるツールの整理は、経理の業務効率化に有効なツール・システムの活用術も参考になります。

 

ステップ3:稟議・承認の電子化から着手する

可視化と優先順位付けをおこなった結果、最初の施策として稟議・支払承認の電子化が選ばれやすい理由は明確です。承認待ちと督促作業は、システムへの投資対効果が大きく、かつ経理部門が主導して着手できる領域だからです。増員やBPOと異なり、承認フローの電子化は比較的短期間で運用を開始でき、効果も月次サイクルの中で早期に確認できます。

 

ただし、全社のあらゆる申請を一度に電子化しようとすると要件が膨らみ、プロジェクトが頓挫するリスクがあります。まずは経理部門への影響が最も大きい支払依頼など1種類の申請に絞ったパイロット導入から始めるのが現実的です。

 

承認ルートを標準化し、進捗を可視化するだけでも、月末に積み上がっていた承認待ち案件の滞留は大きく改善されます。

 

部門をまたぐ承認が複雑な場合は、承認ルートの設計パターンと見える化の考え方もあわせて確認すると、パイロットの範囲を決めやすくなります。

 

すでに請求書管理をクラウド化している企業であれば、支払承認の電子化はその次のステップとして、バックオフィス横断のデータ連携へとつながります。

05

稟議電子化が残業削減に効く理由

稟議の電子化は、ペーパーレス化や印鑑廃止といった手続きの簡素化にとどまりません。残業削減という観点で見たとき、その核心は承認待ちの滞留を構造的になくすことにあります。

 

押印前提の運用を見直す視点は、脱ハンコと承認プロセスのDX化ガイドも参考になります。

 

紙やメールで稟議を回している場合、承認がどこで止まっているかは誰にも見えません。経理担当者は一件ずつ電話やメールで承認者を探し、督促する必要があります。

 

電子化すれば承認フローの現在のステータスがリアルタイムで把握できます。滞留が発生した時点でシステムが自動でリマインドすることも可能です。担当者が督促に費やしていた時間は、そのまま削減されます。

 

差し戻しの対応も変わります。紙の場合、差し戻し理由が口頭や手書きのメモにとどまり、再申請のたびに経緯を確認し直す手間が発生します。電子化すれば差し戻し理由がコメントとして履歴に残るため、修正の判断が迷いなく行えます。また、外出時にはスマートフォンから承認できるようになることで、承認者の不在がボトルネックになる状況も解消されます。

 

紙稟議と電子稟議の違いを主要な観点で整理すると以下のとおりです。

 

観点 紙・メールの稟議 電子稟議・システム化
所在の把握 誰のところで止まっているか不明。担当者が個別に確認する手間が発生する 現在の承認ステップをリアルタイムで把握でき、滞留箇所が即座にわかる
督促の工数 経理担当者が電話・メールで承認者を個別に督促。繰り返し発生する 滞留時にシステムが自動でリマインドを送信。説く作業がゼロになる
場所の制約 出社・押印が必要。承認者の出張・在宅勤務時は処理がストップする 外出先・在宅勤務中もスマートフォン等から承認可能。場所を問わない
差し戻し対応 差し戻し理由が口頭・手書きとなり、再申請のたびに経緯を確認し直す 差し戻し理由がコメントとして履歴に残り、修正の判断を迅速に行える
監査・証跡 書類のファイリングと保管場所の確保が必要。過去書類の検索に時間がかかる 承認日時のタイムスタンプが自動記録される。検索機能で即座に証跡を提示できる

 

電子帳簿保存法やインボイス制度への対応で請求データの電子化を進めている企業にとっては、承認フローとのデータ連携も重要な観点です。請求書はクラウドでデータ化されているにもかかわらず、支払承認が紙やメールのままの場合、承認者は金額や取引先を改めて稟議書に手書き・入力し、承認後は経理担当者がその内容を会計システムに再入力するという二重作業が発生します。

 

承認フローを電子化し、請求書データとつなげることで、請求書の情報が承認画面に自動で引き継がれ、承認結果も会計システムに連携されます。入力の手間や確認工数、入力ミスによる手戻りを同時に削減できます。

 

業務プロセスを見える化し自動化する視点は、業務フローシステム導入で解消される6つのことも参照してください。

06

経理管理職がピーク可視化から稟議電子化を進めた想定ケース

ここでは、従業員約80名、経理部門5名体制の中堅商社を想定した改善イメージを示します(実解企業の実績数値ではありません)。同社では月末になると経理担当者の残業がひとりあたり40時間を超える状態が続いていました。

 

支払承認がメールと紙の混在で運用されており、未承認の案件がどこで止まっているか誰にもわからない状況でした。経理部長自身も毎月数時間を、他部署への督促の電話やメールに費やしていたといいます。

 

「現場の処理が遅いのではないかという可能性も考え、本当にそうなのかデータで確かめようと思った」。そう話す経理部長は、2週間の業務棚卸しを実施しました。現場担当者に作業時間と待ち時間を記録させた結果、処理全体の約3割が承認待ちと督促作業に費やされていることが判明します。「忙しさの原因は処理スピードではなく、見えない待ち時間だったとデータを見て初めて腑に落ちた」と振り返ります。

 

この結果を経営層に提示し、まず支払依頼の稟議1種類に絞ったパイロット導入を提案しました。営業部門からは新しいシステムへの抵抗もありましたが、承認の遅れが取引先への支払い遅延につながるリスクをデータとともに説明し、協力を得ました。対象業務を限定してスモールスタートを切ったことで、現場の混乱は最小限に抑えられました。

 

導入後は、週次の定例会議で滞留一覧を確認するレビュー運用を開始。承認が滞るとシステムが自動でリマインドを送り、外出中の承認者もスマートフォンから対応できる体制が整いました。

 

その結果、月末に集中していた業務の波が平準化され、残業時間は段階的に削減されました。「可視化して初めて、改善すべき課題が承認フローにあると分かった。システムを入れる前にやるべきことがあったと実感した」と経理部長は語っています。可視化のあとで初めて、請求データと承認フローの断絶が課題だと共有できた、というのがこの想定ケースの要点です。

07

よくある質問

Q. 経理部門の残業を減らすには何から始めればよいですか。

 

A. いきなりツールを導入するのではなく、まず現状の業務を棚卸しすることから始めましょう。月末に集中している業務はどれか、実作業時間と承認待ち時間がどれくらい発生しているかを、2~4週間程度のサンプリング期間で記録し、ボトルネックを特定することが正しい改善策を実行するための前提になります。

 

Q. 稟議の電子化は経理の残業削減にどうつながりますか。

 

A. 最大の効果は、承認待ちの滞留が可視化されることです。誰のところで処理が止まっているかがリアルタイムで把握でき、滞留時にはシステムが自動でリマインドを送ります。外出中の承認者もスマートフォンから対応できるため、承認者不在による遅延もなくなります。経理担当者が督促に費やしていた時間が削減され、それが残業削減に直結します。

 

Q. 請求書は電子化済みですが、稟議だけ紙のままでも問題ありますか。

 

A. 問題があります。請求書の受領を電子化しても、その後の支払承認が紙やメールのままでは、電子データと紙書類の照合や二重入力が発生し、経理の確認作業がむしろ複雑になります。入り口だけを電子化した状態では本来の効率化は実現しません。請求書の受領から承認、会計システムへの連携までを一連のフローとして電子化することで、初めてボトルネックが解消されます。

08

情報収集で終わらせないために、先に定義しておく成功状態

読者の多くは方法論の収集ではなく、月末に経理が逼迫している状況で、ピーク原因を特定し、承認待ちと二重入力を減らし、締めに間に合う運用へ切り替えたいはずです。先に成功状態と着手順を決めてください。

 

避けたい失敗は2つです。可視化を飛ばした全社一斉導入は、要件膨張と未定着で効果が見えません。請求書だけ電子化し承認・会計連携を後回しにすると、照合と督促が残り残業は減りません。

 

成功状態は次の3点です。現場では滞留件数が週次で一覧できる。数字では月末週の残業と督促件数が可視化前より下がる。心理では「月末は仕方ない」ではなく「滞留が見えるから手を打てる」と説明できる状態です。

 

今日からのチェックリストは次のとおりです。

 

  1. 2〜4週間、件数・実作業時間・待ち時間を同一フォーマットで記録する
  2. 発生頻度×改善難易度で上位2つだけをパイロット対象にする
  3. 請求データの保存・検索と承認連携のどちらが先かを1枚で説明する
  4. 滞留件数・督促時間・差し戻し率など成功条件を導入前に決める
  5. 全社展開はパイロット運用が回ってから検討する

 

向くのは月末ピークが慢性化し紙と電子が混在する組織、向かないのは棚卸し協力がなく数字なしでツール選定だけ進める場合です。後者はまず1週間の記録合意から始めてください。

09

まとめ

経理部門の残業が月末に集中する根本的な原因は、処理件数の多さではなく、他部署からの承認待ちや差し戻しによる前工程の遅れにあります。これを解消するためには、ツール導入を急ぐのではなく、業務量のピーク・処理時間と待ち時間・ボトルネック工程という3つの切り口で現状を可視化することが出発点です。業務を棚卸しし、優先順位を決定したうえで、効果の大きい稟議・支払承認の電子化から小さく着手することが現実的な進め方です。重要なのは、システムを導入することを目的にするのではなく、可視化によって真のボトルネックを見つけることです。

 

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この記事を書いた人

赤峯豪
BtoB専門ライター。通信事業会社・大手IT企業で16年間、BPR(業務プロセス改革)や予算管理業務に携わる。在職中に独学で簿記2級を取得。DX・RPAを含むオペレーション改善を幅広く企画・実行。その後、売上高1,300億円規模の経営企画・予算管理業務に従事。ライター転身後は、BtoB向け記事、ホワイトペーパー、LPの執筆・制作を中心に手がけている。
監修
田中雅人(ITコンサルタント)

ソフトウェアメーカー取締役、IT上場企業の取締役を経て、現在、合同会社アンプラグド代表。これまでに、Webサイト制作、大規模システム開発、ECサイト構築、SEM、CRM等のWebマーケティングなど、IT戦略全般のコンサルティングを30年以上実施。現在は、大手上場企業から中小企業まで、IT全般のコンサルティングを行っているかたわらWebマーケティングに関するeラーニングの講師、コラム執筆なども実施。

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