青色申告決算書の４種類を完全解説【個人事業主・フリーランス必見】

青色申告決算書とは、青色申告をする人が、損益計算書と収入・経費の内訳、貸借対照表を記載する書類です。確定申告書と一緒に提出する必要があります。
まずは、青色申告について概要を整理していきましょう。

青色申告と白色申告

青色申告は、一定水準の記帳に基づいた正しい申告により、税金面でさまざまな特典を受けられる制度です。
一方、白色申告は税金面での特典は税金面での特典はない代わりに、青色申告よりも簡易的な記帳方法が認められます。青色申告を選択しない場合は自動的に白色申告での申告となります。

青色申告の対象

青色申告は事業所得、不動産所得、山林所得を生ずる業務を行う人が対象です。
青色申告を選択する場合は「所得税の青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署に提出しましょう。インターネット（e-Tax）でも提出できます。

青色申告のメリット・デメリット

青色申告には税金面の大きなメリットである一方、事前準備や日々の記帳がやや大変な側面があります。

メリット

青色申告の最大のメリットは税金面の特典です。主要な特典は下記のとおりです。

青色申告特別控除

事業所得（総収入金額－必要経費）から最高65万円を差し引け、所得税を軽減できます。
但し、65万円を控除できるのはe-Taxでの電子申告または優良電子帳簿保存をおこなう場合で、その他の場合の控除額は55万円または10万円です。

家族への給与を必要経費に算入できる

税務署に届出を行えば、家族（生計を一にしている配偶者などで15歳以上の親族）に支払った給与は全額を必要経費として計上できます。

赤字を3年間繰り越せる

今年の赤字を翌年以降の黒字額から差し引ける特典です。今年の赤字を差し引く分、所得額が減るため、所得税の軽減につながります。なお、赤字は最大で3年間繰り越せます。

デメリット

青色申告のデメリットは、事前に申請が必要な点と記帳がやや大変な点です。

事前申請

「所得税の青色申告承認申請書」を、青色申告を行いたい年の3月15日までに提出します。2025年の所得について青色申告したければ、2025年の3月15日までに申請する必要があります。

記帳

青色申告では、主要簿と補助簿を使った記帳が要件です。
主要簿は総勘定元帳と仕訳帳の2種類、補助簿は現金出納帳や売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などが該当します。
不安な方は、費用がかかっても会計ソフトの利用がおすすめです。簿記の知識がなくても、画面表示に従って感覚的な操作で記帳を進められます。

青色申告決算書には4種類あり、事業内容に合ったものを使用します。各種の内容をみていきましょう。

一般用

事業内容が農業や不動産に該当しない場合に多くの事業者が使用する標準的な決算書です。4ページの構成で、損益計算書や貸借対照表などが含まれます。

1ページ目

1ページ目は損益計算書です。大きく分けて、売上、売上原価、経費、各種引当金・準備金、青色申告特別控除の5項目を記載し、事業全体の収支状況を示します。

2ページ目

2ページ目の主な内容は月別の売上・仕入れの金額、支払った給料・専従者給与の内訳、地代家賃の内訳、貸倒引当金繰入額の計算、青色申告特別控除の計算です。
20日締めなど帳簿の締め日が月末以外であっても、1月1日～12月31日までの数字を集計して記入しましょう。

3ページ目

売上・仕入れの明細、減価償却費の計算、利子割引料の内訳、税理士や弁護士に払った報酬の内訳を記載するページです。利子割引料の内訳には、金融機関以外からの借入金の内容と利子を記入します。

4ページ目

貸借対照表と製造原価の計算が4ページ目の内容です。
貸借対照表では、資産の部と負債・資本の部の各合計が一致するはずです。一致しない場合はどこかに誤りがあるため、必ず見直して修正しましょう。

農業所得用

農業を事業として営んでいる個人事業主が使用する決算書です。構成は一般用と同じ4ページで、「種苗費」や「肥料費」などの勘定科目が設けられるなど農業特有の要素が反映されています。

1ページ目

1ページ目は損益計算書です。1ページ目の損益計算書は、売上や経費を記載する基本的な構成は一般用と同様です。
なお、農業における収入金額は収穫時点で計上します。また収穫した農作物を自家消費した場合は「家事消費」として収入に含めます。

2ページ目

収入金額の内訳や農作物以外の棚卸高、雇人費（給与のこと）の内訳、専従者給与の内訳が書かれるページです。収入金額の内訳は農産物の種類ごとに作付面積や収穫量、販売金額を記入します。

3ページ目

一般用とほぼ同じ内容ですが、売上・仕入れの明細がなく、代わりに「果樹・牛馬等の育成費用の計算」を記載する点が一般用と異なります。

4ページ目

貸借対照表、貸倒引当金繰入額の計算、青色申告特別控除の計算などを記入するページで、書き方は一般用と同様です。

不動産所得用

土地や家屋を貸して得た収入（家賃収入など）がある方は「不動産所得用」を使います。こちらも4ページ構成で、内容も一般用とほぼ同じです。

1ページ目

不動産所得用も1ページ目は損益計算書で、収入金額、必要経費、青色申告特別控除額について記載します。

2ページ目

収入の内訳、給料賃金の内訳、専従者給与の内訳を示すページです。収入の内訳には、物件ごとに物件区分や住所、契約期間、月々の家賃など詳細な情報を記入します。

3ページ目

3ページ目の記載項目は、物件ごとの減価償却費の計算や地代家賃の内訳、借入金利子の内訳、税理士・弁護士への報酬の内訳などです。ここでの地代家賃は自分が支払う金額を指します。

4ページ目

貸借対照表のページです。資産の部には現預金のほか、土地・建物も含みます。

現金主義用

現金主義とは、収入が確定したタイミングではなく、実際に現金の出し入れが行われた時点で収入や費用を計上する方式です。 対象は前々年分（2年前）の事業所得および不動産所得の合計が300万円以下の小規模事業者に限られ、選択するには税務署への届出が必要です。

現金主義用の決算書は2ページの構成で、貸借対照表は作成しません。
1ページ目には収入金額、必要経費、専従者給与の内訳、青色申告特別控除額などを、2ページ目には減価償却費の計算や地代家賃の内訳、税理士・弁護士への報酬などを記載します。

作成した青色申告決算書類の提出方法は、税務署への持ち込み、郵送、e-Taxの3種類です。それぞれ簡単に紹介します。

税務署に直接提出

税務署に出向いて書類を提出すると、当分の間の対応として、窓口で交付する「リーフレット」に申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載したものを、希望者に窓口担当者からその場で渡してもらえます。開庁時間外でも収受箱への投函で提出できます。

郵送で提出

所轄の税務署または業務センターに郵送する方法です。日付・税務署名（業務センター名）を記載したリーフレットを交付してもらいたい場合は、宛名を書いて切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。
なお、確定申告書は「信書」に該当します。郵便物または信書便物として送る必要があり、宅配便など荷物扱いでは送れません。

e-Taxで提出

e-Taxとは、国税に関する各種手続きをインターネット上で行えるシステムです。PC、スマートフォンのいずれでも利用できます。
但し、利用前に「利用者識別番号」の取得が必要です。e-Taxの詳しい利用方法については、公式サイトをご確認ください。

ここでは、青色申告や確定申告についてよくある質問を紹介します。

青色申告はどうやって始めればいいですか？

回答

納税地（原則として住所地）を管轄する税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
住所地を管轄する税務署は国税庁のサイトで調べましょう。

確定申告はいつ実施しますか？

回答

今年生じた所得について、翌年の2月16日～3月15日（土曜・日曜の場合は翌月曜）の間に申告・納税します。
なお、2024年分の所得の申告期間は2025年2月17日～3月17日です。

e-Taxで提出するメリットは何でしょうか？

回答

65万円の特別控除が受けられるほか、生命保険料控除証明書などの添付を省略できるうえ、自宅で申告を終えられるため、申告にかかる時間を短縮できる点がメリットです。

会社員が青色申告することはできますか？

回答

会社員でも、事業所得・不動産所得・山林所得があれば青色申告を行えます。但し、副業などで得た収入を事業所得として申告しても、雑所得として判断される恐れがある点には注意が必要です。

引っ越した場合の手続きは？

回答

引越し後1ヵ月以内に「個人事業の開廃業等届出書」を所轄税務署に提出しましょう。e-Taxでも提出できます。

最後に、本記事の要点を簡単に振り返っておきましょう。

• 青色申告決算書とは確定申告を青色申告で行う人が提出する損益計算書、貸借対照表などの書類
• 青色申告決算書は4種類ある（一般用・農業所得用・不動産所得用・現金主義用）
• 青色申告決算書の提出方法はe-Taxが便利

青色申告は最大65万円の控除など、節税効果の大きい申告方法です。記帳がやや煩雑ですが、会計ソフトを使えば少ない負担で決算書の作成まで進められます。まだどうするか迷っている方も、前向きな検討をおすすめします。

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