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経理の「ムダ」は経営リスクにつながる

さっそく、経理部門で生じやすい「ムダな作業」とその原因、起こり得るリスクについて整理していきましょう。
経理業務における「ムダな作業」とは
経理業務におけるムダな作業は、主に以下の4つに集約されます。
・紙の書類の扱い:印刷やファイリング、郵送など
・ハンコ:経費精算や稟議書の決裁など、押印のために紙を回覧する承認フロー
・現金:小口現金の管理や経費精算など
ムダの温床となる5つの「ない」
経理業務のムダが改善されない原因として、5つの「ない」が考えられます。
1. そもそも問題意識がない
長く続いている従来の取り組み方に疑問を持たなければ、ムダはなかなかなくなりません
2. ITリテラシーがない
リテラシーの低さからITツールの必要性やメリットを理解できていないと、改善は進みません
3. 経営層の理解がない
経営層が経理業務を効率化する価値を理解していない場合も改善は難しくなります
4. 他部署との連携がない
他部署から経理への書類の提出遅れや記入ミスが多いと、その分時間を奪われます。日頃からの丁寧なコミュニケーションが必要です
5. 標準化された業務プロセスがない
業務の属人化によってブラックボックス化すると、ムダの発見も難しくなります
こうした原因から経理業務のムダを放置するとどうなるのか、次で解説していきます。
経理のムダが企業経営にもたらすリスク
経理のムダを放置すると、企業の経営にまで影響を及ぼしかねません。具体的なリスクは以下の5つです。
1. コストの継続発生
経理担当者の残業代や消耗品(紙やプリンタのインクなど)、郵送費などのコストがかさみ、ムダな支出が続きます
2. 人的ミスの発生
入力や転記作業が多いほどミスのリスクは高まります。一度ミスが発生すればフォローにも時間を要し、場合によっては顧客からの信用も失いかねません
3. 経理担当者のモチベーション低下・離職
ミスの許されない精神的な負担の大きい業務が多いうえに残業が続けば、担当者のモチベーション低下につながります。離職となると、新しい人材の採用や教育にコストや労力を要します
4. 不正の発生
形だけの承認や甘い管理体制は不正が起こりやすい環境です。不正により失った信用の回復には長い時間がかかるでしょう
5. 経営判断の遅れ
数字の集計作業やレポートの作成も時間のかかる業務です。経営層は利益やコストなど経営判断に必要な数字のリアルタイムでの把握が難しくなり、迅速かつ的確な経営判断の妨げとなります
経理部門の本質的な役割は、単なる数字の管理や集計ではなく、会計データの分析や予実管理、コストカット戦略の立案による経営層のサポートです。
そのためにも、ムダを省き、担当者がより付加価値の高い業務に取り組める環境づくりが重要です