ここからは、会計ソフトの選定において軸となる10個の項目について詳しく解説します。各項目について、「経理部門の視点」「情シス部門の視点」「ベンダーへの問い合わせ時に活用できる質問例」の3つの観点で整理します。
比較軸① 業務カバー範囲(仕訳・月次決算・年次決算・申告書類)
自社の決算業務および申告業務が、対象となるシステムでどこまでカバーできるかを確認しましょう。複式簿記の原則に基づく入力、勘定科目の柔軟な設定、部門別の集計、複雑な消費税処理、固定資産管理、およびキャッシュフロー計算書の作成機能までが含まれているか、などが評価ポイントとなります。
- 経理のチェックポイント:
- 現在行っている決算実務の何割が、追加の加工なしに会計ソフト内部で完結するかを確認します。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 独自のカスタム仕訳の定義や、外部の業務システムから出力されたデータを一括で取り込む際の拡張性を評価します。
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- 確認すべき質問例:
- 「当社の部門階層(例:3階層、50部門)を設定し、部門ごとの損益計算書を出力することは可能ですか」「固定資産の減価償却計算は自動で行われますか」
比較軸② 法令・制度対応(電子帳簿保存法・インボイス制度・電子申告)
現在のバックオフィス実務において必須となる、各種法制度への適合性を評価します。
- 経理のチェックポイント:会計ソフト単体の機能だけでなく、取引先から受領した請求書の保存や、適格請求書発行事業者の登録番号(インボイス番号)の有効性を、国税庁の公表情報と照合してシステム内でどのように確認できるかを切り分けます。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 法令対応の基準として、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)による第三者認証を取得しているかどうかを確認項目に含めます。なお、国税関係書類の電子保存において、ClimberCloud(クライマークラウド)のような電子帳簿保存ストレージサービスを活用し、会計ソフトの外側で法令対応の役割を担わせる選択肢もあります。会計ソフト内部で完結させるか、外部の専門システムを併用するかを慎重に判断します。
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- 確認すべき質問例:
- 「インボイス制度における登録番号(適格請求書発行事業者の登録番号)の有効性を、国税庁データと自動照合する機能は備わっていますか」「電子帳簿保存法に対応した検索要件を担保するための運用手順を教えてください」
比較軸③ 操作性・学習コスト・現場定着
システムの画面デザインや操作性が、ユーザーのスキルレベルに適合しているかを比較します。
- 経理のチェックポイント:
- 簿記の知識が乏しい現場の従業員でも直感的に使えるUI(ユーザーインターフェース)であるか、あるいは熟練した経理経験者がキーボードだけで高速に入力できる効率的な操作性を備えているかを確認します。テンプレート仕訳や自動仕訳ルールの充実度も重要な評価軸となります。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 新しいシステムの導入にあたり、経理担当者の習熟にどの程度の期間を要するか、繁忙期である決算期や申告期にシステムのレスポンスが低下しないかを評価します。提供されるマニュアルやヘルプページの質も確認します。
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- 確認すべき質問例:
- 「過去の仕訳履歴から、勘定科目や補助科目を自動で推測して提案する機能はありますか」「仕訳入力画面のショートカットキー一覧を提供いただけますか」
比較軸④ 導入形態(クラウド型・オンプレミス型・ハイブリッド)
自社の働き方やインフラ戦略に合わせて、最適な導入形態を選択します。
- 経理のチェックポイント:
- テレワークの実施可否、複数拠点からの同時アクセスのしやすさ、法改正に伴う自動アップデートの有無、初期費用の抑制といった観点から、基本的にはクラウド型を前提に検討を進めることが推奨されます。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 自社の業種における規制、既存のオンプレミス資産との互換性、オフライン環境での業務継続要件の有無を判断基準とします。クラウド型を採用する場合は、データセンターの物理的な所在地、SLA(サービス品質保証)、およびシステムのメンテナンス時間が自社の稼働時間と重複しないかを確認項目に含めます。
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- 確認すべき質問例:
- 「貴社クラウドサービスのご案内にある稼働率実績(SLA)はどのくらいですか」「定期メンテナンスに伴うシステム停止の頻度と時間帯について教えてください」
比較軸⑤ 金融機関・カード・決済データの自動連携
銀行口座やクレジットカードとのデータ連携は、経理業務の工数削減効果が最も明確に体感できる領域です。
- 経理のチェックポイント:
- 連携対象の金融機関が、自社で利用しているすべての口座やクレジットカードを網羅しているかを最初に確認します。
- 情シス部門のチェックポイント:銀行APIを用いた安全な接続が確保されているか、データの更新頻度はどの程度か、取り込んだ明細を仕訳に変換する際のマッピング精度の高さを比較します。
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- 確認すべき質問例:
- 「当社がメインバンク(主要取引銀行)として利用している金融機関において、API連携による明細の自動取得は毎日行われますか」
比較軸⑥ 周辺業務との連携(請求・経費精算・売上・給与・在庫)
会計ソフトが社内のデータ循環のハブとして機能するかどうかを見極めるための軸です。
- 経理のチェックポイント:請求書の発行、経費精算、販売管理、給与計算といった周辺の業務システムについて、会計ソフトと同一ベンダーが提供するシリーズ製品で統一するか、あるいは別の専門SaaSを組み合わせて利用するかを整理します。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- システム間のデータ連携が、リアルタイムなAPI連携なのか、手動でのCSVエクスポート・インポートなのか、あるいはRPA(ロボットによる業務自動化)を介するものなのかを明確にします。例えば、売上データが独立した販売管理システムのみに存在し、会計システムへ手作業で転記を行うような二重入力が発生するかどうかを見極めます。
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- 確認すべき質問例:
- 「外部の販売管理システムから出力される売上データを、CSVファイルを用いて一括で仕訳データとしてインポートするためのフォーマット仕様書をいただけますか」
比較軸⑦ API・データ連携設計(マスタ・トランザクション・エラーハンドリング)
情シス部門の担当者が、技術的な観点から最も厳密にチェックすべき項目です。
- 経理のチェックポイント:データの連携処理が失敗した際に、どの取引でエラーが発生したのかを画面上で容易に特定できるかどうかを確認します。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 提供されているAPIがREST規格に準拠しているか、仕訳データだけでなく取引先マスタや部門マスタの同期方向(双方向か一方向か)、イベント検知のためのWebhookの有無、開発検証環境(Sandbox)の提供有無を精査します。既存のkintoneやCRM、独自の受発注システムなどとの接続計画がある場合は、PoCにて問題なく実行できるかを検証することを推奨します。
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- 確認すべき質問例:
- 「APIの詳細な規格を教えてください」「マスタの連携エラーが発生した際のエラーログの取得方法について詳しく説明してください」
比較軸⑧ 権限・監査ログ・セキュリティ
企業の重要な財務データを守り、内部統制を担保するためのセキュリティ要件を比較します。
- 経理のチェックポイント:内部統制の維持や税務調査時の証跡として、操作ログがどのように記録され、どのように閲覧できるかを確認します。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 柔軟なロール設計(仕訳の入力者、承認者、閲覧のみのユーザー、全体の管理者など)が可能か、操作ログの保持期間は十分か、アクセス元を制御するIPアドレス制限機能や、SSOに対応しているか、二要素認証の強制ができるか、データの外部エクスポート権限を特定ユーザーのみに限定できるかを精査します。
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- 確認すべき質問例:
- 「ユーザーごとに仕訳の承認権限を細かく制御することは可能ですか」「過去の仕訳データをエクスポートしたユーザーのログは、どの程度の期間保存されますか」
比較軸⑨ 料金・TCO(初期費用・ユーザー数・オプション・サポート)
ベンダーがウェブサイト等で提示している月額プランの料金表だけで判断するのではなく、総所有コストを算出します。
- 経理のチェックポイント:
- 無料プランや1年間無料といったキャンペーンの裏にある機能制限(月間取引件数の上限、登録できるユーザー数や取引企業数の制限、外部連携機能の制限)を見落とさないように注意します。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 初期導入費用、利用するユーザー数の追加に伴う従量課金の仕組み、API利用オプション費用、有償のサポートプラン料金、既存システムからのデータ移行費用、その他追加料金を合算し、最低でも3年間の運用を見据えた総所有コストを試算して比較します。また、顧問税理士にアカウントを付与する際の専用ライセンス費用の有無も確認します。
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- 確認すべき質問例:「現在の従業員規模から今後3年間で従業員が50名増加した場合の、アカウント追加ライセンス費用を含めた年間見積もりを提示いただけますか」
比較軸⑩ 税理士連携・ベンダーサポート・障害時対応
導入後の安定した実務運用と、万が一の事態における事業継続性を確保するための軸です。
- 経理のチェックポイント:外部の顧問税理士に対して、監査や確定申告のための専用の閲覧権限やデータ共有形式が提供されているか、一般的な税務申告ソフトとのデータ連携がスムーズに行えるか、ベンダーサポート体制と障害時の事業継続性についても確認します。
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- 情シス部門のチェックポイント:
- 問い合わせチャネル(電話、チャット、メール)の受付時間や対応スピード、システム障害発生時の情報公開フロー、およびベンダー側におけるデータのバックアップ方針を評価します。
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- 確認すべき質問例:
- 「システム障害が発生した場合、ユーザーへの第一報はどのような手段で、どのくらいの時間内に行われますか」「バックアップデータは地理的に離れた場所に冗長化されていますか」