実務では、既に複数のシステムが存在しているにもかかわらず、その間を人がつないでいることが問題になります。
前述の経理の実務担当者を対象にした調査では、ムダだと感じる作業として、データの複数システムへの二重登録を挙げた人が38.0%にのぼりました※1。類似書類の複数回作成が27.3%、紙媒体と電子媒体への二重保管が25.0%と続いています。
別の調査でも、基幹・会計まわりのシステムに満足していると回答した割合は24.8%にとどまり、課題として機能の不足が41.8%、使いにくさが38.2%挙げられています※2。
ここから見えてくるのは、システムを導入することと、業務がつながることは別だという事実です。種類はそろえたのに現場の入力作業が減らず、締めのたびに数字の突き合わせが発生し続ける状態は避ける必要があります。
※1出典:ムダだと感じる経理業務の1位は「データの複数システムへの二重登録」!
※2出典:経理業務でAIを導入している企業は57.4%!
◆ソフトウェアやシステムなどの全体的な満足度を教えてください。

◆あなたの部門の経理のデジタル化に関する不満や課題に関して当てはまるものをすべてお答えください。

隙間が生まれる典型的な場所
システムの隙間が生まれ、二重入力や突き合わせが発生する典型的な場所は、次の4つのタイミングです。
● 受注・売上データを会計へ渡す
販売管理システムの受注・売上データを、経理が会計システムに仕訳として入力し直す。イレギュラーな値引きや返品があると数字が合わず、目視での確認が発生する
● 在庫の数字を販売側と突き合わせる
販売管理システムの出荷済みの数字と、在庫管理システムの出庫済みの数字がリアルタイムで連動せず、月末の棚卸しで差分を調整する
● 給与や勤怠を会計へ取り込む
給与計算ソフトのデータをCSVでダウンロードし、会計システムのフォーマットに合わせて手動でインポートする
● 請求書を支払データに起こす
PDFや紙の請求書を見ながら、オンラインバンキングと会計システムの両方に同じ金額を手入力する
共通しているのは、システムそのものが完全に機能していないわけではなく、問題はシステムの境界にあるデータの受け渡しだという点です。システムの隙間は機能の不足というより、責任の境界として捉えると分かりやすくなります。
全部を入れ替えずに隙間を埋める方法
現行システムを残したまま、データの受け渡しだけを改善する方法もあります。CSV連携、API連携、連携用のデータベースを介した統合が代表的な例です。
● CSV連携
既存システムからデータを書き出し、別のシステムへ取り込む方法。取り組みやすい一方、ファイルの出力・加工・取り込みの作業が残り、完全な自動化には限界がある
● API連携
システム同士がプログラムを介してデータをやり取りする方法。売上確定と同時に会計側へ自動でデータが渡る仕組みも実現でき、人の作業を大きく減らせる。会計ソフトのAPI連携で手入力ゼロは実現できるかやWebAPI超入門も参考にしてください
● 連携用のデータベースを介した統合
複数のシステムからデータを集め、連携基盤を経由してやり取りする方法。古いシステムと新しいシステムが混在する場合や、連携先が多い場合に向いている
重要なのは、最初からシステムを一つにするという結論を出さないことです。まず、どこに手作業が残っているかを特定し、その部分だけを改善できないかを検討します。
電子帳簿保存法とインボイス制度の要件は隙間に落ちやすい
法制度への対応も、システムの隙間を考えるうえで注意したい点です。
電子取引データの保存や適格請求書の管理などは、販売管理、請求書管理、会計といった複数の業務にまたがります。そのため、販売側のシステムで処理するのか、会計側で処理するのか、別のシステムを使うのかを決めないまま導入すると、経理が処理するはず、営業が対応するはずといったすれ違いが生じやすくなります。最終的にフォルダへの手作業での保存や、Excelの台帳でのインボイス番号管理といった人手による運用が残ることがあります。
基幹システムを導入すれば、自動的に法制度への対応が完了するわけではありません。必要な要件をどのシステムが担い、どのデータをどこに保存するのかまで、設計段階で決めることが重要です。